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2005/02/10

ロングセラーゆえのトラブル


ほかのジャンルはどうか知りませんが、ビジネス書って基本的に、増刷しないと利益にならないんですよ。初版だけで終わっちゃうと、制作費(原料費や人件費その他もろもろすべて含む)の回収がやっと、返品その他で大量にあまらせたら赤字です。同じフィルムを使って増刷を何度か重ねて、やっと利益が出る。

だから、とくにこう書房くらいの中小規模の出版社にとっては、増刷を重ねるロングセラー本っていうのは、とっても大切な「会社の財産」なんです。そしてこう書房には、そういった「財産」がけっこう多い(多かった?)のが、会社としてのひとつの強みだったんですよ。

でもね、そういう「ありがた~いロングセラー」だからこそのトラブルっていうのもあるんですね。

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カバー写真
2002年の初版発行以来、毎年2回ほどの増刷を重ねて、いまも売れ続けている『パート・派遣・契約社員の労働法便利事典』(Amazonへはこちらから)という本があります。

増刷というのは、社内在庫が少なくなっているが市場(書店)からの引き合いはまだあり、まだまだ売れそうだというときに、書籍を増産することです。その際に、たとえば校正漏れの直しだとか細かい数字の修正だとかはしますが、基本的には本文内容をいじらず、いまある印刷フィルムを最大限活かして印刷します。同じフィルムでたくさん刷ったものが売れて、やっと利益になるわけで、ここでフィルムをやまほど作り直しとなると、なかなか利益にならないんです。

で、この本。最初の発行は2002年。その後、何度か増刷しましたが、2004年に労働基準法および労働者派遣法が大きく改正されたため、2004年の第4刷(4回目の印刷分)でも数字等をそれにあわせて修正し、その時点で第3刷以前のものを出荷停止とし、書店さんには4刷との商品入換をお願いしたわけです。

このときに、古い書籍を絶版にし、改正法対応分は新刊として新規に作り直せばよかった。デザインその他は変えなかったとしても、せめて新しいISBNをつけ、新刊登録すればよかった。

しかし、「売れ続けているロングセラー」ということにこだわってしまったのです。せっかくのロングセラーだから、「増刷」で対応しようと。

結果、タイトルも書籍番号もカバーデザインも同じだけど、現状でも役に立つ第4刷以降と、現状では役に立たない第3刷以前という、2種類の本ができあがりました。これでは読者さんや書店さんが混乱するというので、第4刷以降には「改正法に対応」という帯を巻き、出荷することにしたんです。

ところが...

読者さんから電話をいただきました。「帯には改正法に対応となっているが、書かれていることはぜんぜん対応してない。古い法律のときのままじゃないか!」と。そこで奥付を確認してもらうと...

第2刷に「改正法対応」の帯を巻いたものが出荷されていた(T_T)

本当に申し訳ないです。わざわざ書店さんまで出かけていって買ってくださったのに、オビに「改正法に対応」と書いてあるのを確認して買ってくださったのに、中身は「対応していない本」だったんです。

もちろん、すぐに最新刷をお送りすることを約束し、古い本は返品してくださるようお願いしました。でも、正しい本に換えることはできても、買うために出かけた時間と代替商品が届くまでの時間は返せません。必要だから購入してくださったのに...

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なぜこういうことが起きたのか。

簡単にいえば、こう書房の商品流通を委託している倉庫会社のミスです。出版社からは倉庫会社に対し、4刷以降のものにだけこのオビを巻いて出荷してくださいとお願いしてあります(新刊印刷時に同時にまかれるオビ以外は、倉庫会社で巻いてもらっています)。でも彼らは、2刷に帯を巻いて出荷したんです。

では、なぜそういうことが起きたのか。

4刷ができた時点で、倉庫会社にはそれ以前の刷の在庫分を「使用不可」扱いにし、よけておいてもらっています。なので、古い刷にオビが巻かれるはずはないのです。

でも、書籍は返品があります。出版社からも古い商品の返品・入換をお願いしていましたし、それがなくても売れ行きが悪ければ返品されてきます。

通常の本では、返品があれば、本の天地と小口(ページが綴じられている以外の部分)を磨き、カバーをきれいなものに換え、注文があれば再出荷します。

『パート・派遣・契約社員の労働法便利事典』も同様に、返品分をきれいにして再出荷します。ただ、同じ返品分でも、再出荷できるのは4刷以降のものだけ、というところが違うのです。その確認を、倉庫会社はきちんとしなかったわけです。

でもね、そうやって倉庫会社に責任を押し付けちゃうのは簡単ですが、それよりも「増刷」ではなく「新刊」にしておけばこんなことは起きなかったわけです。だって、3刷以前と4刷以降を見分けるヒントは奥付の記載だけ(本文内容を確認しろと要求するのはあまりに酷)。いちいち本を手にとって、奥付ページを開いて、そこの刷数を見て、ってしなければいけない。新刊として書籍番号を変えていたら、あるいは書名を少し変えていたら、表紙を見るだけで古いか新しいか確認できるのに、「ロングセラー」にこだわったために増刷で処理した出版者が悪いのです。

倉庫に面倒をかけ、読者さんに迷惑をかけた。すみません。

もし労働法の棚を担当されている書店の方がここをご覧でしたら、まことにお手数ですが、『パート・派遣・契約社員の労働法便利事典』の奥付を確認していただきたいです。もし3刷以前のものが入っていましたら、たとえどんな帯がかかっていようと、返品してください。間違いなくそれは改正労働法に対応していませんから。

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しかし、法律関係の本とか、あるいは企業・業界研究の本などもそうですが、本の内容が古くなり現状と合わなくなるのはどうしようもありません。現状と合わなくなる前に全部売切れてしまえばそれがいちばんですが、そうはいきませんし、売れたら売れたで増刷するわけで、増刷のタイミングと「世の中の変化」のタイミングがぴったり合うことなんてめったにありません。

あまりに世の中の変化が大きくて、本の内容がまったく役に立たなくなったら、もうそれはあきらめて捨てるしかないのですが、ちょっとした経年変化などの場合には、増刷時に該当部分を多少修正するだけで生き延びさせます。増刷を重ねてやっと利益が出るという出版社(というか、こう書房?)の利益構造では、そうするしかありません。

このときに、読者さん(購買者さん)に申し訳ないなと思うのは、増刷前のものと増刷後のものが市場に混在し、しかも同一価格で売られてしまうということです。増刷時の修正の程度はそのときどきによって違いますが、たとえば発表されたばかりの最新の数字が入ったものと、それ以前の数字が掲載されているものが、「同じ本」として同一価格で市場に混在しちゃうんです。

出版社に在庫がなくなり、でも書店からの注文は続いているから増刷するのですが、その時点で市場(全国の書店の棚)にどのくらい「増刷前の本」があるのか、出版社では把握できません。その棚にある「増刷前の本」が、そのまま書店で売られるのか、それともそのうち返ってくるのかも、まったく予想ができません。

ときどき「増刷して最新のものをつくったのなら、それ以前の古い刷は全部市場から回収して処分すべきだ」とおっしゃる読者さんがいらっしゃいます。その気持ちはわかるし、そうできるものならそうしたいとも思いますが、市場在庫がまったく把握できない状況では、残念ながら不可能です。一気に何千冊の回収をして、その分の返金をするくらいなら、増刷しないで市場での売り切りを出版者は選ぶでしょう、きっと。

でも、多少とはいえ内容の修正が加わったものとそうでないものが混在し、それが同一価格で売られているという状況は、やはり変だよなぁと、いち消費者として自分は感じます。

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たとえばね、最新増刷分は定価でも、古い刷は多少の値引き販売とかできないんだろうか。内容に修正が加わっているとはいえ、大枠での本の持つ価値や役割には違いがないという(自分勝手な)理由で出版社は「増刷」を選び、同じ値段で売り続けているのですが、古いものはやっぱり古いんですよ。

もちろん、古くてもいい(少なくとも、大枠がわかればいい)という読者さんもいるはずですし、最新じゃなきゃいやだという方もいるはず。腹が立つのは、最新がいい、これが最新だろうと思って「定価」で買ったのに、じつはその後に増刷されたものが別のお店に(あるいは同じお店のストックに)あったことに気づいたときです。どう考えたって、ムカツク。

これが、最新版と古い版で値段に差があったなら、納得もできるんです。大枠がわかればいいから古い刷を安く買いたい。ちょっと高くても最新のものを買いたい。こういった「購買動機と支払希望額の多様性」に、もっと対応できるようにならないものだろうか。

いろいろな制度にしばられている現状のままでは、おそらくなにもできません。でも、どこかに「より納得して本を買ってもらえるため」の修正可能ポイントは、ありそうに思うんだよなぁ。たとえば時限再販というのも、いろいろ「(出版社側からの)だめな理由・できない理由」を挙げる人も多いけど、「(購買者側からの)本を買う動機」から考えれば、「だめな理由・できない理由」ではなく「どうすればできるようになるのか」というスタンスで考えれば、ヒントにはなると思うんだけどなぁ。

あぁ、もう出かけなくてはいけません。けっきょく今日もまとまらず(汗)。


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《新刊プレゼント企画やってます》

応募期間は2月25日まで。詳細はこちらを読んでね。なお、現時点ではあいかわらず応募者ゼロ。やはり企画倒れか(涙)。


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《今日のお仕事》

5月ごろ発行予定新刊本文校正&図版原稿と組み合わせ。
などなど。

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コメント

バーゲンブックってご存知ですか?

投稿: | 2005/02/12 17:32

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