えっと、まず最初にいっておきます。Podcastってなんだか、おいらはよく知りません。いまだにiPodも持ってないしさぁ(通勤時はもっぱらポータブルCDプレイヤーでCDを聴いてます)、携帯電話も持ってないしさぁ(使い方も知らない)... というような状況です。なので、大きな勘違い、思い違い、理解の間違いがあるかもしれません。
そのあたりを踏まえたうえで。
先日、うちの会社の大ボス(社長くんね)が、暇だったのか、話しかけてきました。なんでも、新しい携帯電話がほしいと思っているのだそうです。テレビが見られるやつ。ワンセグとかいうんでしたっけ? ちなみに自分は、ワンセグもどういうことだかよくわかってませんが。
うちの大ボスは、もしかしたらけっこうテレビ好きなのかもしれません。映画やスポーツ番組やドキュメンタリーやニュースや、いろいろと見ているようです。会議のときなども「このあいだの、あの番組、みたか?」といった問いかけをよくされるのですが、自分はほとんどテレビを見ないので、けっこう困ります(^^;)。
いや、それはどうでもいいのですが。
ともかく大ボスは、テレビが見られる新しい携帯電話がほしいなぁと思っているそうなのです。だったら購入すればいいじゃんと思います。大ボスなんだから、社長なんだから、携帯電話くらい好きなものに買い換えたって、誰も文句なんていいません。
でも、大ボスにはひとつ、購入を躊躇するに値する大きな心配があるというのです。それはなにか?
テレビが見られる携帯電話でテレビを見るのは、いったいどういう状況のときでしょうか。大ボスのふだんの生活・行動から考えると、それは主に通勤等の移動時、電車に乗っているとき、になるのです。というか、電車のなかが暇だからテレビでも見よう、かといってポータブルのテレビをわざわざ買って持ち歩きたいほどではないのだが、日ごろから持ち歩く携帯電話で見られるなら便利だよなぁ、というのが「新しい形態がほしいぃ~っ」という動機のおおもとなのでしょう。
しかし、ここで大ボスははたと困ってしまいました。
電車の中でテレビを見てしまったら、本を読む時間がなくなってしまう。
そうです。大ボスにとって電車での移動時間は、大好きな読書のための大切な時間でもあるのです。
テレビを取るか、読書を取るか。これは大ボスにとって、とても重要な問題です。これがあるために、テレビつき携帯への買い替えがなかなか決断できないようです。
おいらとしては、どっちでもいいじゃんと思います。そんなに毎日、しかも電車に載っている時間に、見たいテレビ番組があるとは思えません。見たいものがある日はテレビを見る、ない日は本を読む、でいいのじゃないかなぁと、テレビにも読書にもそれほど強い欲求を持っていないおいらは考えてしまいます。
しかし、世の中の大きな流れを考えると、読書を捨ててテレビに向かう人は少なくないのだろうな、とも思います。
以前は、多くの人が通勤電車の中で本を読んでいました。新聞を読んでいる人もたくさんいました。
ウォークマンをはじめとした携帯用の音楽再生機ができて、音楽好きの若者は電車のなかで音楽を聴くようになりました。それでもエッセイなどの気軽に読める本やマンガなどは、音楽を聴きながら読んでいました。
やがて携帯電話が普及し、それで電子メールが送れるようになりました。電車のなかで本を読んでいた人は、本を読むあいまなどにメールのやりとりをするようになりました。そしてだんだんと、本を読むよりも友人間でメールのやりとりをするほうが楽しいと感じる人が多くなってきました。
さらに携帯電話はインターネットへも接続できるようになりました。メールなどの文字情報だけでなく、ウェブサイトにアクセスし、ヴィジュアルも見られ、情報検索にも使えるようになりました。それどころか、ゲームなどをダウンロードしたりと、小型でさまざまな用途に使えるエンタテインメント機器へと変貌していきました。
小さくて場所をとらないエンタテインメント機器であるマルチファンクション携帯電話を手に入れた人たちは、どんどんと読書を捨て、その興味は携帯電話を使ったエンタテインメントへと向かっていきました。
そして今度は、ワンセグ携帯電話でテレビが見られるようになるのです。Lismoで音楽も聴けるのです。まだかろうじて電車内で読書をしている数少ない人の何割かも、ついに読書を捨てるかもしれません。うちの大ボスのように読書が大好きで1日中本を読んでいるような人ですら、今回のワンセグ携帯には心動かされているのです。
読書って、非常に気力と体力のいるエンタテインメントだと思います。積極的に文章を読み、頭の中に映像を思い浮かべ、その場面での書く登場人物たちの心情や声音や表情を推し量り、読み進めなければいけない。これ、かなりのストレスです。しかも満員などの混んだ電車のなかではページをめくるのもままならなかったりしますし。
一方、音楽やテレビというのは、読書よりも圧倒的にストレスの少ないエンタテインメントです。自分はただ「受け取る」だけでよく、自分でなにかを一生懸命考えたりしなくても充分に楽しめます。しかも、音楽であればイヤホンをするだけで、本体はバッグの中に入れておけるので、身動きの取れない満員電車ないでも楽しめます。テレビにしても、携帯電話で見られるのなら、文庫本を読むよりも圧倒的に小さなスペースで事足ります。
ただでさえストレスの多い通勤時間の電車内。それを軽減するためのエンタテインメントですから、よりストレスの少ないものを選択するのは、非常に自然なことだといえるでしょう。
こうして、どんどんと「電車の中で読書をする人」は減っていき、かといって忙しい日常には「電車のなか」以外に読書をするような時間はなかなかとれず、結果として「どんな状況だろうが本を読みたい、その時間もつくる」という一部の超読書好き以外の人は、基本的に本を読まないのが当たり前になっていってしまうんだろうなぁと思う今日この頃。
えらく長くなりましたが、ここで最初に戻ります。
満員電車では文庫本ですら広げるスペースが取りにくい。しかも、自分で積極的に文章を読んで理解しなくちゃいけない読書は疲れるけど、映像や音声を受け取るだけの音楽やテレビはそんなに疲れない。
だったらさ、本も「読ませる」のではなく「聞かせる」にしちゃったらどうだろう。アナウンサーや役者など日本を読んでもらった「音声」を、有料でPodcast配信するの。本の内容にもよるだろうけれど、うちらのようなビジネス書出版社なら、たとえば自己啓発系の書籍とか、管理者・リーダー向けの人心掌握術とか、セールスパーソン向けのマニュアルとかは、全然問題ないというか、ものによっては音声で聴いたほうがかえっていいかもしれない。これってけっきょく、ビジネスパーソンや経営者向けなどによく行なわれている研修・セミナーのCD-ROM版と同じようなものだものね。
もちろん、本1冊単位で音声ファイルを売ってもいいけど、たとえば1章ごと、1項目ごとに売るのでもいい。毎日1項目ずつ配信したら、もしかしたら毎日の朝礼・ミーティング時にテーマとして採用してくれる企業さんとかも出てくるかもしれない。さらに、たとえば接客マニュアルやマナー本のようなもので「動きの解説」とかが必要な場合、本であればイラストや図解などで表現していたけれど、これも音声付動画ファイルとして配信すれば、携帯電話で見られたりしないのかな。
どうでしょう、「本(の内容)を音声ファイルで(も)売る」というアイデア。最初の録音時に余分な費用がかかるけれど、1回録音してしまえば、あとはそのファイルを配信するだけだから、本のように初版部数や増刷部数で悩んだりということもなくて、便利だし、ダウンロード数が増えたときの利幅も大きいと思うのだけど。コピー対策をどうするかは考えなくちゃいけないけどな。
電子ブックがあまり普及しないのは、紙の本の考え方をそのままデジタルデータに置き換えようとしてるからじゃないかと思う。本というハードを電子ブックリーダーというハードに置き換えるだけで、文字を読ませるという基本的な考え方や扱い方にかわりがない。それでは、わざわざハードを替えるだけの動機にはならないと思うのですよ。それにたぶん、本というハードのほうが使い勝手もいいだろうし。文字を読ませることに執着するにしても、フォントサイズが変えられるとか、自動ページ送り機能があるなどという、いかにもアナログな本から生まれた範囲内ぽい発想の機能をつけるのではなく、大胆にページが入れ替えられるとか、一括で登場人物等の名前を自分や友人の名前に置き換えられるとか、自分でマークをつけたところだけを抽出したオリジナルのハイライト版をつくれるとか、そういった機能をつけたほうがよっぽどいいと思う。って、これではゲームノベルか? 実は電子ブック市場はゲームの世界ですでに開拓され成熟しているというようなことを誰かが書いているのをどこかで読んだが、そのとおりなのかもしれない。
それとは別の方向で、文字を読ませるという考えを捨て、もっと自由に「コンテンツを届ける」と考えれば、それが文字でなく音声でも動画でもいいわけで、広がるのではないかなぁ。電車の中で、好きなときに好きなところを聴けるラジオドラマといった感じ? それが普通の本と同じ値段で買えたらいいかもなぁ。
携帯の買い替えに悩む大ボスを見て、そんなことをぼんやりと考えたのでした。
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