紀伊國屋さんチェーンの月間書籍実売データを見てたんですよ。出版社ごとの実売数上位50点の一覧表を。うちのデータだけでなく、いわゆる「ビジネス書出版社」と呼ばれる他社さん数社のデータも一緒に。
上位50点に入る本って、ほとんどここ1年くらいのあいだに出た本なんですね。
当たり前といえば、当たり前です。普通に考えれば発行初月から数ヶ月の本のほうが、1年も前に出た本よりは売れるわけですから。初月に数千部の注文出荷があった本でも、2~3ヵ月後にはよくて半分くらいの注文数になり、半年後には数百部、場合によっては数十部なんていう残念な結果になることだってあるわけです。
そして、こう書房だって年間40点弱の新刊を出してますし、他社さんではもっと発行点数の多いところもあります。そうであれば、上位が発行1年くらいまでの本で占められて当然。むしろ、数年前の本が多く上位にリストされるということは「ちゃんと売れる新刊が出せていない」ことの証明にもなってしまうわけで、そっちのほうがまずい感じです。
でね、売上上位数点の実売数と、リストのいちばん下のほう、売上ランク40~50位くらいの本の実売数を見てみるとですね、歴然たる差があるわけですよ。20倍、30倍、場合によっては50倍以上の差があったりします。
もうね、売上順位40番目くらいの商品は、多い出版社さんでも40冊くらいしか売れてないわけですよ。ほとんどの出版社さんは20冊程度。10冊以下のところもあったりします。
これ、月間で、ですよ。しかも、「オール紀伊國屋月別ベストセラー」ってことは、紀伊國屋さんのチェーンまとめての数字ですよね? あの巨大チェーン、あの紀伊國屋書店の、しかもチェーンまとめても、月に10冊しか売れないなんて...
発行後半年くらいまでの本はおおかた、数十冊、数百冊単位で売れているんです。でも、それより前の本になると、いくつかの例外を除いて、がっくり落ちてくる。
これも、しょうがないですよね。だって、毎日何十冊、何百冊という新刊が発行され、書店さんに届くわけですから。書店さんとしては、新刊だからとりあえずは展示したい(しなくちゃいけない)だろうし、かといって棚のスペースは限られているから、来たものをただそのまま出すというわけにはいかないでしょう。
どの書店さんも、チラッと見ただけで、すでに棚にはぎっしり本が詰まっているのがわかります。ということは、新しく来た本を展示するためには、それと同じ分だけいまある本を返品しなくちゃなりません。
では、どれを返品するか。そりゃ、動きのあまりよくないものが上位候補になりますよね。そしてたいていの場合、本の実売数は右肩下がりに減っていくので、2か月前に出た本よりも半年前、1年前に出た本のほうが動きがよくないわけです。
こうしていっそう「新刊しか売れない(積極的に売っていない)」状況へと進むわけで...
本って、以前は「増刷を繰り返して利益を得る」「ベストセラーだけでなくロングセラーを狙う」という考え方が出版社にあったのだけど、もう、それって無理になってきてるような気がします。出版社にも、書店にも、ロングセラーを育てケアする余裕も体力もなくなっているんじゃないかと。
もちろん、なかにはちょっとした弾みでロングになる本もあるだろうけれど、そういう商品はもうレアケースなんじゃないかと。出版社や書店が各商品にかける通常の労力と情熱と資金で商品がロングセラー化することは、ほとんど期待できないんじゃないかと。
でね、思ったんですよ。新刊しか売れないんだったら、新刊しか売らなければいいんじゃないかって。どうせ発行後数ヶ月~1年程度のものしかきちんと売れないのなら、増刷を繰り返すとかロングセラーを狙うという考え自体を捨てちゃったほうがいいんじゃないかと。
どんな本も基本的に初版で売り切り。よほど大きな実売が出ているなら別だけど、それ以外は、多少の売り損じがありそうな感じがしても、増刷すればうまくいくかもなんていう夢は見ずに、潔く「品切れ」にしちゃう。どうせ数週間~数ヶ月すれば返品が来るのだから、それまでは品切れにし、それでもどうしても「ほしい」という書店さんには返品で対応。もし、思ったよりも返品がこなかったら、それはそれでOKと。そうして、その商品については1年以内に社内在庫を全部吐き出し(確実に吐き出せるだろうと思える分しか初版を刷らない)、2年以内に市場在庫(新刊書店の棚にある在庫)もなくなるようにする。
そうやって「売り切り」にしていった商品のうち、成績のよかったものに関しては3年後(市場在庫がなくなった1年あと)に、中身はそのまま(印刷用のフィルムを流用)、ジャケットだけ(場合によっては書名も)新しくして、「新刊」として発行する。もちろんこれも、その後は「売り切り」にし、1年で社内在庫を全部吐き出す。このときも満足のいく成績が出たなら、また3年後に、また新しいジャケットで新刊として「再発」する。
ジャケットを新しくする以外は「増刷」と同じなので、制作費も制作の手間も、それほどかかりません。これを繰り返せば「増刷を繰り返す」とほぼ同じなので、利益が出てくるようになるはず。
しかも扱い的にはあくまでも「新刊」なので、書店さんもきちんと展示しないわけにはいかない(^^;)? お客さんも、新刊以外にまで注意をはらっている余裕がある人は少ないから、増刷して「既刊」のまま棚においておくよりも手にとってくれる確率、買ってくれる確率が増えるはず??
ポイントは、市場在庫がなくなって少し間をおいてから復刻する、ということ。市場在庫があるうちに復刻すると、復刻前のものが一気に返品されてしまい、利益を圧迫します。市場在庫がなければ、復刻しても返品の危険がなくなります。
しかも、成績のよかった本であればきっと、「あの本、評判がよかったので読みたかったのだけど、最近は売ってないんだよな。あのとき買っておけばよかった。失敗したなぁ」と思ってくれる読者もいるはず(超希望的観測)。ほしいのに、手に入らないという渇望感を与えられます。そんなときに「あの名著がジャケットを新しくして復刻」のアナウンス。今度はなくなる前に買っておこうと、購買意欲がアップすると(これ以上ないほどの楽観的観測)。
どうでしょう(^^;)。こうすれば、出版社は新刊点数をそろえるために無理な企画を無理やり本にすることもなくなり、ちゃんと売れる(売れた)本だけを「新刊」のラインナップに入れていくことができます。新規企画は「売れなかったために復刻できなかった商品数分」だけつくればよく、結果として1企画にかけられる時間も増えるはず...?
これって、音楽業界での洋楽アルバム販売のやり方ですよね、たぶん。
人気アーティストのアルバムでさえ、超ベストセラー・ロングセラー以外はイニシャルで売り切り。数千枚の初回プレスが市場からなくなったら、そのあとしばらくは品切れ・廃盤です。そしてしばらくして、紙ジャケットだとか、新ライナーノーツとか、ちょっとだけ見た目を変えて復刻発売する。「待望の紙ジャケ!」とか「あの名盤がやっと手に入る!」とか適当なあおり文句の宣伝をつけて。
そして、それにつられてふらふらと買ってしまうファンも意外と少なくなかったりして。特定のアルバムについてすべての復刻盤・再発盤を持っている人って、実際にいますし。
それに、毎年のように発生する「新しく洋楽を聴く人になった人」は、そうした「復刻・再発のアナウンス」で過去の名盤に触れ、新たにそのアルバムやグループのファンになっていっくことがあったりする。そうやってロングセラー化していくのですよね。
本もね、同じような考え方って、できないかなぁと。新しい企画、新しい本をつくっていくことはもちろん大事だけど、新しい本だけをつくり続け、市場に投入し続けなくちゃいけないっていうこだわりは、捨ててもいいかもしれないなと、ちょっと思っているのです。そこにこだわるから、「新しい本」にするために実は新しくないテーマや内容に無理やりのアレンジを加えなくちゃいけなくなったりする。せっかくの良書にも、「リニューアル」や「リメイク」の名のもとに余計な手を加えてしまう。結果、いびつな本や中途半端な本ができあがってしまったり。
それよりも、過去に読者に喜ばれた本を内容はそのままに、装いだけ変えて再投入するほうがいいんじゃないかと。リニューアルやリメイクでヘタに内容に手を入れてせっかくの完成物を壊すよりも、手を入れるのは「見た目だけ」にして、新刊として新しい読者(となるであろう人)の前に再登場させたほうがいいのではないかと。そういう本がもっと新刊扱いで書店に再度入荷されることがあってもいいのではないかと。その分、無理な企画や内容の「新しい本」の点数を減らすことができないかと。
けっきょくそれが、よい本を長く読み継いでもらえる=ロングセラー化につながる道のひとつなのかもなぁと思ったりする今日この頃なのです。
====================
最近のコメント